既婚男と恋仲になってしまった女、希和子が相手の男の生まれたばかりの娘を誘拐してしばらく育てる話。誘拐した娘には薫と名付ける。
夢中になって読んでしまったが、ふと思い返してみると、ストーリー自体はそんなんでもなかったと思う。何にそんなに惹かれたのか考えてみると、希和子が薫のことを大切に思う気持ちがじんわり、というかなんというかぎゅーっと伝わってくる文章ではないかと思う。犯罪を普通に犯してしまっている状況や、薫の実の両親に対する感情、親切にしてくれる人を欺いていることなど、子供が可愛いとかそんなこと言ってる場合では全くなし、ましてやその子供は誘拐されている被害者なのに。なのに、そんな状況にはまったく構わず、誰かが誰かを大切に思う気持ちというのは成立するものなんだなと感じた。
小説を読んで、どこをどう感じるかはその人の現在の状況や今までの経緯などが大きく関係してくると思う。私は近頃は誰かに対してこんな気持になることはないなあ笑。だからなおさらそのような表現が強く印象に残ったのかもしれない。
なんにしても、「希和子と薫をずっと一緒にいさせてあげたい」、「大切に思う人と離れたくない」なんて、希和子の身になって、そして自分自身の思いとしてそのように感じさせる、思わせる文章を書く、小説家ってのはすごいなあとしみじみ思いました。
まあ、その場合、成長した薫は希和子のことをどう思うかは考えたくありませんが笑...
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